完璧であった。朗誦につきまとふ、あの大時代な思ひ入れ、目をむくような抑揚が私は嫌ひだ。
カザレスはよそをむいて呟くように「肉は悲し(ラ・シエール・エ・トリスト)」と最初の一行を誦してくれた。

_塚本邦雄「冥府燦爛」