_

美丈夫の松助とならぶと、四十を越した小柄な三笑は、老いた猿のように醜い。幕内は、色まみれだ。老いの猿と美丈夫がいまだに色をかわしあっているのであれば、醜のかぎり狂のきわみだが、それゆえにこそ、並みを超えた力が顕現するかもしれぬ。
_皆川博子「鶴屋南北冥府巡」